大衆車の地位を失ったカローラ

2017/08/15

持論・暴論

トヨタ・カローラと言えば、かつては日産サニーと大衆車の王道を競った名車であるが、最近はプリウスやアクアと言ったエコカーに完全に駆逐されて見る影もなくなってしまった。カローラの開発担当者は、もっと若者にも乗ってもらいたい、売れて欲しい、と願っているのだろうが、正直に言って、今のままでは復活は永久にありえない、と断言しても良い。


減った法人需要

かつてはフォーマル車の基本はセダンであった。どんな小さくてちんちくりんなデザインでも、腐ってもセダンだったのである。だからカローラにも法人向けの需要がそこそこあったのだが、それも今は昔。今はどこの企業も中堅以下の営業車の見てくれなど気にしないらしく、プリウスやアクアがどんどんシェアを蚕食している。ワゴンにしても、タブレット端末の普及もあってか、大量のカタログを積む機会が減ってコンパクトカーで事足りるため、台数は減少気味である。これは日産でも同じ事情らしく、ラティオ廃止のときに「最近は法人さんでもノートのほうが売れるんですよ。こっちのほうが便利らしいです」と担当氏が寂しそうに語っていた。もはや小型セダンの出る幕はないのだ。


絶望的な出来栄え

今のカローラは純粋に車としての出来栄えも最悪である。5ナンバーサイズのセダン、ワゴンとしての希少性、という以上の価値は無いと断言しても良い。元々カローラの美点と言えば価格以上のクオリティという点に尽きるのだが、海外仕様と別プラットフォームになってからは全くこの点を感じられない。
まずエクステリアだが、非常にダサい。これ以上の表現はないくらいにダサい。先代や現行の前期型は「あぁ、年配者や保守層に向けたデザインなのだな」という点でまだ納得できたのだが、今の形は高級さも若々しさもない、謎のデザインとなってしまっている。
インテリアも平々凡々でその辺のコンパクトカーレベル。価格相応と言えばその通りなのだが、逆に良い点も見出だせない。旧型の時は今よりも明らかにクオリティが上であった。今、同じ程度の内装を得ようと思うと、プレミオ辺りを買わなければならない。
アクシオの内装色は基本的に黒一色で、シートだけベージュ色を選択可能という意味不明な設定。前期型はドアトリムの色もシートに合わせてあったから明らかなコストカット=手抜きである。そのシートにしても、昔のトヨタに有りがちなフワフワシートでなく、それなりの硬さがあるのは良いとして、クッションの奥行き感に乏しく、腰回りのサポートも弱いので腰痛持ちにはお勧めできない。これで満足できるという人がいたら一度ルーテシアにでも座ってみると良い。恐らく感動で失禁不可避であろう。
ドライバビリティも皆無である。ステアリングは手応えがなく、ロードインフォメーションは皆無。センター付近でもブヨブヨとした感触で、遊びが大きく気持ちが悪いことこの上ない。もちろん、細かな操作をしても車の反応は知らぬ存ぜぬと言った風な挙動。危機回避性能などはちゃんとテストしているのだろうか?前輪後輪の接地性も皆無に等しい。では、乗り心地は良いのかと言えばそんな事はなく、つねに後輪が突っ張ったような感触で不快な振動を伝えてくる。高速域やコーナリングの安定性も有って無いようなものである。
もちろんエンジンも世の中の悪いものを合わせたような出来で、とろとろ走っている時はまだ静かだが、ちょっと加速するとたちまち野犬の唸り声のような下品なサウンドが響き渡る。加速もCVTのネガな性質が全開で、アクセルワークに対する応答性が最悪。ブレーキの効き具合も操作性に乏しいし、ペダルの感触もスカスカである。
正直な所、今のカローラを好き好んで買っている人間がいるとすれば、どうしても小型のセダン・ワゴンが必要か、販売店との縁故があるか、よっぽどのクルマ音痴かのいずれかである。

そんなわけで、初めて車を買おうという若者に絶対お勧めできない車がカローラである。こんなものに乗ってしまうと「車の運転は楽しいものだ」という感想を一切抱くこと無く、つまらない中年に成り下がることが必定だからである。だから、若者諸君は日産でもスバルでもホンダでもどこでも良いから、色眼鏡なしに見て回って、自分で車種を決めなさい。悪いことは言わないから。

それから、以上の内容を見て気分を悪くしたトヨタの関係者がいたら一言言っておきたい。これは率直な感想である。ここまで言うのは昔のカローラが先に述べたような「価格以上のクオリティ」という、日本車らしい美点を有していたにも関わらず、ここまで手抜きを重ねた下駄車、いや便所スリッパ車に堕したのは何故か、と悲しむからである。コストがどうのと言い訳は無用である。おたくの仲間のスバル・インプレッサG4は、ハイブリッドこそ無いものの、優れた性能を安価に実現しているではないか!それを天下のトヨタが何をしているのか、と言いたい。