ルノー メガーヌGT 試乗記

2017/11/13

試乗記



今月9日に日本発売となった新型メガーヌ。フランクフルト・モーターショーでの発表が2015年の9月であったから、2年もファンを待たせての登場ということになる。
今回はハッチバックに1.6Lターボの"GT"、1.2Lターボの"GT-Line"、ワゴンに"スポーツ・ツアラーGT"という3グレードが用意されている。走りを意識した強気のラインナップだ
(個人的には大人しいルーテシアの標準モデルも売れてほしいのだが……)。今回はハッチバックの"GT"に試乗することが出来た。

エクステリア

とりあえず眺めていると、まず巨大なルノーエンブレムとLEDヘッドライトが目に入ってくる。そしてリアに回るとテールからフェンダーにかけての意匠もなかなかに自己主張が強い。ただの買い物車ではなく、いかにも"走る車だぞ"という感じである。とは言え、それらを厭味ったらしく見せずに全体としてスッキリとまとめているのは流石。フランス車はどんなに厳ついスペックを誇っていても、第一にオシャレでなければいけないのである。乗っている人間がどうか?は別問題であるが……。
ともあれ、エンブレムをきちんとデザインの中に落とし込むやり方や、燈火類の演出は国内メーカーも見習ったほうが良いだろう。

インテリア

運転席周辺は至って標準的。ただ、メーターは流行りの液晶タイプが採用されており、ユーザーの好みに合わせて表示パターンを切り替えることが出来る。
ナビ周辺やエアコンの操作パネルは驚くほどの絶壁。しかも黒い樹脂の、である。機能的にもデザイン的にも悪くはないのだが、国産車のデラックス感に慣れていると、拍子抜けしてしまうかもしれない。操作してみると、モニター部のタッチ操作はかなりレスポンスが良く好印象だったが、黒の絶壁にまでタッチ操作機能を盛り込んだのだけは頂けない。エアコンやオーディオの操作は手先の感覚だけで出来るようにツマミや押しボタンスイッチであるべきだ。
それから内装の特徴で言えば、極端なまでの"青推し"である。ステアリングにも青地にGTのロゴが入っているし、助手席を見ても、ドアの内側を見ても、必ず青のパネルや間接照明が目に入ってくる。好きかどうかは別として、こういう尖った演出もフランス車のお楽しみ要素なのかもしれない。
シートの出来に関しては、この価格帯としては非常に満足できるものに仕上がっている。なにせアルカンターラ表皮でタイトなスポーツシートが最初から付いてくるのだ。第一印象は窮屈に思われるかもしれないが、ある程度の時間、車を元気よく走らせていると、もうその辺のチャチなシートには戻れなくなっているはず。これだけでもこの車を買う理由の一つに出来るくらいだ。ただしドライバー視点では◎だが、後部座席の居住性という点では△といったところ。それほど広い造りではないので、同乗者が多い人は十分に確認しよう。

いざ試乗へ

公道へ繰り出してみると、不安要素であったDCTの感触も特に問題なくスムーズな印象。ただ、どうもパワー不足でモッサリしているな、と思っていると、RS Driveなるボタンを発見。どうやらそれまではコンフォートモードで、コイツを押せば本気モードになるということらしい。実際に押してみると、効果はテキメン。水を得た魚のようにスイスイと加速するようになった。ステアリングもグッと重さを増して、いよいよホットハッチの本領を発揮するようになる(出力特性と同時にパワステのアシスト量や変速タイミングも変化するのだ)。どうもコンフォートモードはかなりエンジンをサボらせている状態らしいので、個人的にはずっとこのモードで走っていたい。
加速の印象はやはりターボと言うべきか、ある程度の回転数からグッとパワーが増す感覚がある。とは言え、出力変化の唐突感はだいぶ抑えられているので、扱い難いということは全く無い。1.6Lのエンジンは、最大で205psというそこそこ立派なスペックで、普段使いからドライブまで万遍なく楽しむのに一番良い性能域となっている。
乗り心地に関しては、足回りが硬めに設定されているのがはっきりと分かるが、不快な突き上げやバタつきがピタッと抑えられている点がGood。助手席の同乗者がグラグラと揺さぶられることも無いので安心しもらいたい。もっとも本来"GT"とはこういう設定の車を指すのであろうが……。(酷い乗り味で洗面所へのツアラーと化しているダメ車は反省してもらいたい)

総評

細かなところで不満の多い車である。例えば上に挙げたタッチ式の操作系や、質感の低いパドルシフト、これまた安っぽいカード型のキーなどだ。内装も特徴的だから万人向けとは行かないだろう……。ただ、そんなところを差し引いても車としての完成度はかなり高い。シャシはしっかりしているし、四輪操舵(4WS)も付いてくるし、何より性能が"ガチではないが走りの良さを求めている人"に丁度良いレベルに収まっている。これで334万円はバーゲンプライス(※)だと思うのは私だけだろうか。

※もちろん自動ブレーキや、サイドエアバッグ等の乗員保護装備が全グレードに標準装備される。この点に関して言えば、ルノーがお得なのではなく、大衆車の手を抜く国産メーカーがケチなだけである。北米やEU圏ではこれが普通。


諸元/メガーヌ GT


全長:4,395mm
全幅:1,815mm
全高:1,435mm

ホイールベース:2,670mm
トレッド:1,575mm(前)/1,575mm(後)
最小回転半径:5.2m

車両重量:1,430kg
乗車定員:5名

エンジン:M5M 直列4気筒DOHC16バルブ
総排気量:1,618cc
最高出力:205ps/6,000rpm
最大トルク:28.6kgm/2,400rpm
燃料タンク容量:47L(無鉛プレミアム)

駆動方式:FF
変速機:7DCT
サスペンション:マクファーソン・ストラット(前)/トーションビーム(後)
制動装置:ベンチレーテッドディスクブレーキ(前)/ディスクブレーキ(後)
タイヤ:225/40R18(前) 225/40R18(後)